香港市民に国民待遇与える (粤港澳大湾区のポイント)

中国政府は香港、マカオ、広東省珠江デルタの一体化を目指す粵港澳大湾区の発展計画要綱を発表しました。特に香港市民が注目しているのは中国本土で進学、就業、起業、生活する際の便宜が図られる点です。これまで本土で暮らす香港市民は福祉や公共サービスを享受できず不便な面があり、かねて中央に改善を求めていました。

要綱の発表に先駆けた昨年8月、香港市民らに本土での居住証申請を認めると発表されました。本土で生活する香港市民も居住証があれば本土住民と同様に公共サービスが受けられ、いわば国民待遇を享受できることとなります。

具体的には3項目の権利(就業、社会保険と住宅公積金への加入)、6項目の基本公共サービス(義務教育、就業サービス、医療サービス、法律援助など)、9項目の便宜(銀行・保険・証券などの金融サービス、列車の乗車券購入、旅館宿泊など)が認められます。香港の林鄭月娥・行政長官は今年5月9日に立法会で答弁した際、3月初めまでに12万人の香港市民が居住証を申請・受領したことを紹介しました。

ただし居住証が申請できるのは本土に半年以上居住する場合に限られ、短期的に本土に赴く香港市民が列車の乗車券を購入したり銀行口座を開設するのは依然不便となっています。そこで香港市民が本土に出入境する際に使用している「港澳居民来往内地通行証」(通称「回郷証」)を本土での正式な身分証に格上げし、電子サービスプラットホームを通じて各種公共サービスの利用を可能にすることが検討されてきました。

国家移民管理局などは、「回郷証」は10月から各種の政務サービスプラットホーム、公共サービスプラットホーム、ネットで登録・使用できる有効な身分証となることを発表。享受できる基本公共サービスの範囲は交通運輸、金融、通信、教育、医療、社会保障、工商業、税務、宿泊の9分野に及ぶほか、保険購入、受験申請、シェア自転車利用といった民生サービス、銀行・証券・携帯電話のアカウント開設、ネット決済などの金融・通信サービスの利用手続きも便利となります。

また中央政府は昨年8月に「台港澳人員在内地就業許可」の撤廃を発表し、香港・マカオ・台湾市民が本土で就業する際に就業証を申請する必要がなくなりました。この就業証制度が撤廃されるとともに、香港・マカオ・台湾市民の就業サービス、社会保障、失業登録、労働者の権利保護などの監督管理が強化されます。これは香港市民の本土での就業を奨励する政策の一部で、本土企業が手続きの煩雑さから香港市民の雇用を敬遠する問題が解消されます。

粵港澳大湾区の発展計画要綱では香港マカオ市民(中国国民)が本土の国有企業や事業機関で就業することを奨励しているほか、本土で試験を経て公務員の職に就けるよう検討することも盛り込まれています。広東省政府と香港特区政府が開催した協力会議「粤港合作連席会議」では、間もなく広東省内の企業・機関での香港市民採用を公に行うことが明らかにされました。すでに成熟した都市である香港マカオの若者は成功のチャンスに限界を感じ閉塞感が漂っていますが、大湾区はこうした若者に新天地での可能性を提供することが最大の狙いともいえます。

香港メールニュース 江藤和輝

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